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3D立体視に特化したセンサを持つ「だいち(ALOS)」

AW3Dの技術における大きな特長は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の陸域観測技術衛星「だいち(ALOS)」の撮影した衛星画像を用いている点です。「だいち」には地形データを取得するために3D立体視に特化した光学センサーが搭載されており、3方向(真下、前、後ろ)から撮影できるため死角がありません。起伏の全ての面を撮影できるため、エベレストのような複雑で急峻な地形でも正確な表現が可能になりました。また、真下の画像(直下視画像)は倒れ込みが全くないオルソ画像(トゥルーオルソ)の作成も可能にします。これにより水平情報も加えた3次元情報(DEM+オルソ画像)を活用でき、正確な3D座標を特定できるのです。この3D座標の正確さは日本の宇宙技術の強みである“位置精度の高さ”によるものです。世界最高峰の衛星技術、位置精度の高さが、AW3Dの精度の基盤となっています。

3方向を同時に撮影できる日本の人工衛星「だいち(ALOS)」のイメージ画像(提供:JAXA) 3方向を同時に撮影できる日本の人工衛星
「だいち(ALOS)」のイメージ画像(提供:JAXA)
  • 数値標高モデル(DEM:Digital Elevation Model)数値標高モデル(DEM:Digital Elevation Model)
    地表の3次元座標値(水平位置と高さ)が記録されたデータ
  • オルソ画像(正射投影画像)オルソ画像(正射投影画像)
    地形歪みを除去して、正しい位置情報が付与された画像
  • 3D地図 正射投影画像とDEMを組み合わせた3D地図3D地図
    正射投影画像とDEMを組み合わせた3D地図

高度な画像処理アルゴリズム×高速処理システム

「だいち」が撮影した画像は、リモート・センシング技術センター(RESTEC)がJAXAと共に開発した高度な画像処理アルゴリズムに基づき「前処理、3D解析、地図化、品質検査」の4つの処理過程を経て3D地図になります。
地球上の全ての陸地を撮影した「だいち」の衛星画像は300万枚を超える膨大な情報量であり、さらに画像解像度が高いために処理に時間がかかります。3D地図の製品化にあたり、これらの処理を現実的なスピードで実現したのがNTTデータの高速かつ高精度な情報処理技術です。幾度もの改良を重ね、サーバ計算機での並列大量処理によって1日におよそ2,000セット(2テラバイト)の画像処理を可能にしました。この高速処理技術を持ってしても全世界の画像処理や検証には約2年の時間を費やしました。そして2016年、世界で初めて5mという高解像度で全世界をカバーする3D地図、AW3Dが完成しました。

高度な画像処理アルゴリズム×高速処理システム

全世界で厳しい精度管理

こうして出来上がった3D地図は、他の衛星や地上の検証データと比較し、精度の評価を行っています。地上での検証箇所は4600に上ります。これら比較による高さ精度(標準偏差)は、約3m。これは、防災用途など国土基盤地図に利用可能な基準値をクリアしています。世界には2Dの地図が整備されていない場所も多くありますが、AW3Dにより高精度の3D地図を世界中で利用できるようになりました。これにより、資源・環境・防災・交通分野における各国や世界規模での調査、シミュレーションなどの新しい需要に対応することが可能になっています。

全区画での検証結果:誤差標準3.4m ※緑色が誤差0エリア 全区画での検証結果:誤差標準3.4m
※緑色が誤差0エリア

複数の衛星を連携し3D地図を高精細化

地形の把握という点では、5m解像度は充分な精度ですが、都市部などでは、例えば建設計画での日照予測など、一つ一つの建物レベルの細かい起伏の情報が求められます。そういった要望に応えるために、AW3Dは世界最高解像度の衛星を持つ米国Maxar社と提携し、30cm解像度のWorldView衛星シリーズ等の画像データを活用した高解像度3D地図を提供しています。
この高解像度な3D地図は、高精細カメラを搭載した複数衛星の様々な角度から撮影した画像について、これらを組み合わせて処理する技術を新たに開発することで実現しました。この技術により、樹木1本1本を識別できるレベルまで3D地図の精度を上げる事に成功しました。
AW3Dでは現在、AW3D標準版として全世界整備された5m解像度の他に、最高0.5mまで解像度を高めたAW3D高精細版(0.5m~2m解像度)と、建物1棟1棟の形状まで表現するAW3Dビルディングをご要望に合わせて作成する形で製品として提供しています。

Digital Globe社 衛星群 Digital Globe社 衛星群
  • 都市部における解像度5mと0.5mの比較。解像度0.5mでは建物と道路をはっきりと見分けることが可能。都市部における解像度5mと0.5mの比較。解像度0.5mでは建物と道路をはっきりと見分けることが可能。
  • AW3D ビルディング3Dで表現したボストンの街並み。建物の形状や橋梁、樹木が細かに再現されている。AW3D ビルディング3Dで表現したボストンの街並み。建物の形状や橋梁、樹木が細かに再現されている。

技術の連携で「見る地図」から「使える地図」へ

AW3Dは、「見る地図」から「使える地図」へをコンセプトに技術開発を進めてきました。これまで、JAXAの人工衛星技術、RESTECのデータ解析技術、NTTデータの情報処理技術によって、高コストで利用が現実的でなかった5m解像度の3D地図を全世界で「使える」ように製品を整備しました。さらに米国Maxar社高解像度の衛星写真を使って、これまで「見る」ものであった高精細な衛星写真を「使える」3D地図データにして提供しています。
現在は、AW3Dをベースとして用途に応じたアプリケーションと連携し、より付加価値の高い情報の提供に焦点を当てて技術開発を進めています。例えば水循環変動観測システムと連携したリアルタイムの水害情報の提供や、風況解析ソフトウェアと連携した風力発電所開発プランなど、3D地図を直接「使える」情報にまで加工することにより、それぞれの事業の目的に合ったソリューションとして提供することができます。現段階ではオーダーメイドで進めているこうした技術連携のノウハウを生かして、製品化への整備も進めています。

製品一覧
AW3Dと通信電波計画アプリケーションを連携した電波障害シミュレーション AW3Dと通信電波計画アプリケーションを連携した
電波障害シミュレーション